大会長挨拶|日本医療政策学会 第2回学術集会

 

大会テーマ

公正性と包摂性を目指すEBPM
「誰も取り残さない」医療政策のマネジメントと評価を考える

大会長挨拶

医療政策学会は立ち上げ2年目を迎え、学会としてのアイデンティティと役割を明確にし、さらなる普及と発展を目指す段階にあります。これを踏まえ、第2回となる本学術大会では、会員および関係者の裾野を広げるとともに、EBPM(根拠に基づく政策立案)を含む政策マネジメントの本質的理解を深めることを目的とします。

まず重要なテーマとして、高額な新技術を活用しながら、いかに日本のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を公正かつ包摂的に持続可能なものとしていくかという課題を取り上げます。日本の公的医療制度の主要な特徴の一つである「高額療養費制度」の改定案をめぐっては、当事者や支援者から大きな批判が生じました。本大会では、何が問題であったのか、そして今後いかなる制度設計が求められるのかを改めて問い直します。

また、近年のEBPMに関する議論は、技術論(統計的評価手法)や効率性の話に偏りがちであり、「誰も取り残さない」という社会保障の本質に十分応える議論が必ずしも深められてきたとは言えません。「底上げ」(最も困難な状況にある人々への効果を確保し、その成果を最大化すること)および「包摂」(ユニバーサルなアクセスを確実に担保すること)という視点を踏まえ、医療におけるEBPMのあるべき姿について議論を深化させます。

「誰も取り残さない」ケアシステムの実現には、福祉や地域保健との連携が不可欠です。地域包括ケアシステムの広がりにより、医療を取り巻く諸活動の統合が進み、現場のプラクティスに関するデータの蓄積や、従来アプローチが困難であった層への関与が可能になりつつあります。例えば、保健・介護分野におけるいわゆる「インセンティブ交付金」制度は、現場実践から生まれるデータ収集、望ましい実践への支援、そして政府による政策マネジメントをシームレスに接続する可能性を有しています。さらに、「社会的処方」など、医療現場と地域社会との一層の連携を通じて、孤独・孤立や社会参加といった社会的・文化的ウェルビーイングを促進する活動モデルも各地で進展しています。

本大会では、これらの取り組みを前進させるために必要なエビデンスのあり方と、その実装・活用に向けた政策的スキームを提示します。また、これらに限らず、幅広く医療政策に関わる演題発表を歓迎いたします。多くの皆様のご参加ならびに演題登録を心よりお待ちしております。

大会長
近藤 尚己 京都大学大学院医学研究科 教授